フランチャイズオーガナイザーのブログ

フランチャイズをオーガナイズする仕事をしております。立ち上げたフランチャイズは加盟募集開始から3年で100店舗、4年で150店舗を実現。前々職のフランチャイザー時代には、オーナーコンサルタントチーム責任者としてFC店継続率96%を実現。その後、コンサルティングファームを経た現役のフランチャイズオーガナイザーとして「フランチャイズ業界健全化→地方創生→日本経済活性化に貢献」このためにブログを綴っております。

フランチャイズ戦術シリーズvol.6「改革は象徴的な商品から」

さあ、やってきましたフランチャイズ戦術シリーズです。

バックナンバーは以下をどうぞ。
フランチャイズ戦術シリーズvol.1「ターンキー制度」 - フランチャイズオーガナイザーのブログ
フランチャイズ戦術シリーズvol.2「MO制度」 - フランチャイズオーガナイザーのブログ
フランチャイズ戦術シリーズvol.3「営業しない加盟開発」 - フランチャイズオーガナイザーのブログ
フランチャイズ戦術シリーズvol.4「オープンアカウント」 - フランチャイズオーガナイザーのブログ
フランチャイズ戦術シリーズvol.5「商圏の概念を差別化する店舗開発」 - フランチャイズオーガナイザーのブログ

これまでは新たにフランチャイズを立ち上げる際に活用できる戦術を紹介してきましたが、
今回の戦術は歴史あるフランチャイズの立て直しの際に活用できる戦術となります。
「改革は象徴的な商品から」
この戦術について触れます。
これは新浪剛史氏がローソンの社長だった時代の戦術です。
新浪ローソン時代の戦術に関しては、以前もMO制度を紹介しましたね。

www.shosasakifranchisor.com

「またまた新浪ローソンの話かい!」と思われているそこのアナタ・・・
今回だけでなく、今後もちょこちょこ続きますよ。笑
自分がフランチャイズに情熱を捧げ、フランチャイズオーガナイザーとしての道を追求するキッカケが新浪社長のローソン改革ですから、
個人的にはフランチャイズバイブルみたいなものなのです。

さてさて、今回紹介する「改革は象徴的な商品から」この戦術について触れていきます。
2002年5月にローソンの新浪社長が誕生しました。
新浪社長の言葉で「何をやってもうまくいかない敗残兵のようだった」という表現があったほど、
当時は問題が山積みどころか、問題しかないという内部の状況で、さらに覆し難く見える巨大なライバル(セブンイレブン)がいる現実だったのです。
こういう状況下で、新浪社長がどんな革命を想像し、実行していったかというのが下記書籍に綴られていますので、
興味がある方は是非お読みください。

まず覆し難く見える巨大なライバル(セブンイレブン)を前に、
アナタが新浪社長の立場であれば何からアプローチしていきますか?
MBAケーススタディ的に思考を巡らせると面白いかもしれません。

当時の(ローソンの)状況を纏めると、以下のような状況だったようです。

・それまで親会社であったダイエーがその株全てを三菱商事に売却
・その三菱商事からの出向として、当時三菱商事に属していた新浪氏がローソンの社長として抜擢された
・社内には親会社ダイエー時代に根付いてしまった諦念や経営に対する不信感が充満
ダイエーからローソンに送り込まれた社員達がその後ローソンのオーナーとして独立していたケースも多く、
そのオーナー達はローソンのSVを超えて、ダイエー出身の本部メンバーと交渉するなど、越権行為が散見
・ITや物流網などのコンビニの生命線が全てダイエーの子会社が開発と運営を担っていた
(スーパーマーケット式なのでコンビニには相性が悪かった。運用コストも不透明で高い)
・加盟オーナーによる決死の抗議
・2期連続減益決算

こんな現状ですと、
何から手を付ければよいか非常に判断が難しいですよね。

こんな状況下で新浪社長はまず
「ぜひどのチェーンにも負けないようなうまいおにぎりを作りたい」
と宣言したのです。

まず商品から改革を開始する判断。
しかもコンビニが生んだ中食文化の象徴で、
米飯に具材を入れて海苔で包むというシンプルな商品で、差別化が図りにくい「おにぎり」からの改革。
そんな「おにぎり」で改革を進めても、絶対王者に勝てるわけがないじゃないかと、
社内からも冷笑が少なくなかったそうです。
そんな中でも新浪社長は「おにぎりプロジェクト」始動を決断。

プロジェクトなので、当然プロジェクトチームを発足したわけですが、
新浪社長は社長就任以来、社内を駆け回り、こいつは光る!と感じたメンバー総勢25名を招集。
そしてここでインパクトあるエピソードとして、
総勢25名のうち元々商品開発を担っていた商品部のメンバーを数名しか入れず、
殆どが商品開発の経験がない素人ばかりを集めたのだそうです。

ちなみになぜ新浪社長は「おにぎりプロジェクト」チームから、基本的に商品部を排除したのでしょうか?
これには新浪社長の狙いがあり、諸々の内容を要約すると以下のようになります。

お客様を見ずに、旧親会社であるダイエーから求められる新商品開発の期限ばかりを意識して仕事をしていた商品部。
本来商品部はお客様を見て、ニーズを徹底的に考え抜かなければならないのに、それを怠っていた。
しかもお客様が求めているものではなく、
フランチャイズシステム上の粗利分配方式による利益ばかり考え、粗利益率が高い商品ばかりを開発して、FC加盟店に仕入れさせていた。
これらを踏まえ、当時のローソンを改革するには、まず顧客基点のモノづくりカルチャーを浸透させる必要があると考え、
おにぎりプロジェクトのプロジェクトチームには、
普段から加盟オーナーと接し、加盟オーナーが(お客様の声を把握したうえで)本部に何を求めているか、そもそもお客様の声はどんな性質なのか、
そこに日々耳を傾けている運営部のメンバーばかりを抜擢した。
商品開発の素人集団ではあったが、
たしかなお客様のニーズを把握しており、且つ素人だからこその柔軟で斬新な発想を持っていた。

こういう背景から商品部2割、運営部8割のプロジェクトチームによる「おにぎりプロジェクト」が発足されたそうです。

新浪社長が求めたのは、
まず「いくらコストがかかってもいいから最高のおにぎりを作る」こと。
これに素人集団の中に送り込まれた数少ない商品開発畑のメンバーが声を上げたそうです。
「おにぎりは100円~130円、1円あたり1グラムの重量がないと、消費者は割高だと感じ、売れ行きが落ちます。」
ただこれに対して新浪社長は、
「俺がいくらになってもいいと言っているんだからいいんだ!とにかく最高のおにぎりを考えてこい!」
と一蹴したそうです。笑

この一蹴を皮切りに、素人集団達から次々と(当時からすれば)自由奔放なアイデアが飛び交い、
なぜ鮭はフレークしか入っていないのか?切り身は入れられないのか?
肉を入れてもいいのでは?豚の角煮とかは入れられないのか?
米は産地に拘りたい。新潟のコシヒカリは冷えても美味しいですよ・・など。
いずれも当時のコンビニ業界おにぎりの常識から外れる内容ばかりだったようです。
とはいえ、それら素人集団からのアイデアは、
新浪社長のオーダーには沿うもので、アイデアの試作と試食を重ね、
プロジェクト内で「最高のおにぎり」が出来上がった・・・が、
この時点での売価は300円が妥当とのことでした。
新浪社長もさすがに300円では売れるわけがないと判断し、
「この質を保ちながら、何とか売れる金額まで落としていこう」とプロジェクトチームに指示を出し、
結果、タイの工場などで鮭の切り身を加工することなどに成功し、
売価168円まで売価を下げることができたそうです。

そしてこのプロジェクトを通じて完成したおにぎりは、
発売から2ヶ月で1億個を販売に成功し、おにぎりの販売実績は前年比120%まで伸びたそうです。

新浪社長としては、
ローソンの社長就任後、ほぼ全ての要素で改革の必要があった中で、
なぜ「おにぎり」から着手したのでしょうか?
諸々の文献や発言から推察するには以下のような狙いだったのだと感じます。

改革をするにはまず社内から(新浪社長)自身の経営への信頼を得る、民意を得る必要がある。
そのためには、ローソン内で何か1つ実績を作る必要があると考え(どんな見方をされても作った実績には誰もノーと言えないため)
また、競合の絶対王者への劣等意識を取っ払うには、
言い訳が通じない商品の本流での成功体験が不可欠だったと考えた。
さらに改革の柱となる商品部に対して、自社への粗利主義で見失っていた顧客基点を思い出させるために素人集団との化学反応を仕掛けた。

業績悪化→経費削減→商品力が落ちる→さらなる業績悪化
という負のスパイラルの渦中にあり、
さらに親会社の株売却や経営陣に対する不信感、
くわえてコンビニ業界絶対王者への劣等感に支配されていた現場は、
前述のおにぎりプロジェクトの成功により、一気に盛り上がったそうです。

繰り返しますが、瀕死に近い経営状態であった当時のローソンで、
まず新浪社長は「ぜひどのチェーンにも負けないようなうまいおにぎりを作りたい」と宣言し、
それまでのコンビニおにぎりの常識を打ち破る価格と質を持つ商品開発に成功し、
販売実績前年比120%の結果を残しました。
「おにぎり」というコンビニ食の象徴的な分野で成功を収めたことで、
組織は競合に対する自信と、経営への信頼を取り戻したそうです。
そしてこの成功土台をもとに新浪社長はローソン改革を次々に推進していきました。

いや~凄いの一言。
余談ですが、新浪フリークとしては、
「俺がいくらになってもいいと言っているんだからいいんだ!とにかく最高のおにぎりを考えてこい!」
この一蹴が好きですね。笑

自分は伝説のマーケター森岡毅さんのことも崇拝してますが、
「苦しかったときの話をしようか」本物のキャリアを積み上げたい方への推奨書籍 - フランチャイズオーガナイザーのブログ
「誰もが人を動かせる!」数年後に本気で組織のリーダーになりたい方への推奨書籍 - フランチャイズオーガナイザーのブログ
同じ場面でも森岡さんであればデータを見せて、
データとロジックで周囲を牽引していくイメージが湧きますが、
新浪社長の「俺がいくらになってもいいと言っているんだからいいんだ!」という強引な感じも好きですね。笑
これで実際結果出していくのですから、これはもう経営のセンスですよね。

これをお読みいただいているフランチャイズ業界の関係者の皆様で、
歴史あるフランチャイズの改革に挑むという方の絶対数は少ないと思いますが、
ケーススタディとして、
「何をやってもうまくいかない敗残兵のようだった」
こういう組織の改革ファーストアクションとして、
象徴的な商品から改革をスタートさせたという戦術での成功例、これは頭に入れておきましょう。
要は大きな改革には、小手先ではなく、直球で言い訳が効かない戦術が必要ということですね。
ではまた。
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