2018年7月に発売された書籍なので、
読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。
今回推奨するのは「なぜ倒産~こうするよりほかなかったのか~」です。
タイトルからおおよその内容は察しが付くと思います。
要は企業の倒産事例が幾つも掲載されています。
以下が紹介文です。
苦渋の証言から読み解く破綻企業の敗因。
大ベストセラー誕生から始まった経営者の迷走。
大手に真っ向勝負を挑んだ新工場、過剰投資に終わる。
取材殺到するも内実は…。資金ショートに沈んだベンチャー。
人を育てずFC展開、爆走の末に散った人気チェーン。
ビジネスモデルも社員も刻々と老化、力尽きた老舗宝飾店。―こうするよりほかなかったのか?・・・
自分も当時タイムリーに購入して読みました。
で、数年経った最近、何気なく自宅の本棚の前でぼーっとしていたら、
急にこの本を再度読み返してみたくなりました。
すると、ほぼ内容を覚えてなくて驚きました。笑
というのも、この書籍の一番最初に取り上げられているケース1が、
なんとFC本部企業の話だったのです。
初見時の自分には響かなかったのでしょうか。
FC本部の倒産エピソードが書かれていることすら記憶から消えてました。
そのため、戒めを込めて備忘録として、
今回ブログで執筆しておきます。
前述のとおり、この書籍のケース1がFC本部企業の話です。
遠藤商事ホールディングス(以下、遠藤商事HD)という会社の倒産事例です。
遠藤商事・Holdings. - Wikipedia
あのテレ東の「ガイアの夜明け」にも出演実績があるなど、
一時期は企業自体が順風満帆・・・と見られていたようですが、結果として倒産。
遠藤商事HDは、90秒で調理できる仕組みを考案し、
ナポリ風本格ピザのチェーン店をピーク時は80店舗まで拡大した。
しかし急成長に人材育成が追いつかず、収益力は伸び悩んだ。
出店のための借り入れが膨らんだ結果、
追加融資が難しくなり、資金繰りが滞った。
書籍内の冒頭にはこのような文面で紹介されてました。
そこから読み進めると、
FC展開もしていたという事実が書かれています。
前述に「出店のための借り入れが膨らんだ結果」と書かれていて、
違和感を感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
というのもFC展開をメインで進めていけば、
基本的には本部のキャッシュアウトは無いわけですからね。
これを見て、最初自分はFCよりも直営の比率が高かったのかな?と想像したのですが、
読み進めると、概要が見えてきました。
積極出店の武器となったのが、
誰でもピザが焼けるという窯や生地伸ばし機のセット。
アルバイトでも1枚90秒で本格ピザが提供できるコック不要の店を訴求した。
(実際、この仕組みは飲食業界で表彰もされたとのこと)
~中略~
遠藤商事HDは店舗拡大を急ぐあまり、
FC店をフォローする仕組みがなく、支援がおろそかになった。
普通なら営業前の何日かは研修があるものだが、
遠藤商事ホールディングスから、
「ウチでしばらく人を出しますからすぐに店をオープンしましょうと、出店を進めることが多かった」
と、FCオーナーは振り返る。
ところが2~3ヶ月すると、手伝いに来ていた遠藤商事HDの社員は次の新規出店をするためにいなくなってしまう。
遠藤商事HDの社員がいなくなると、
店の人手が不足し、売上が低迷するFC店もあったようだ。
つまりまず「アルバイトでも1枚90秒で本格ピザが提供できるコック不要の店」では無かったのでしょう。
もし本当に簡易オペレーションであったのであれば、
2~3ヶ月本部の社員がいたら、普通にオペレーションを構築できるはずだからです。
また、文面から察するに、
その派遣された社員達がSVではなく実際は派遣店員でしかなった点も問題ですね。
プロのSVであれば2~3ヶ月も常駐していたら、
研修を繰り返し、採用を支援あるいは促進して、
自分達が抜けてもFC店が運営できるように尽力するわけで、
店を離れた途端、FC店の運営が回らなくなったり、
業績がすぐに落ち込むなんて考えにくいです。
そのため、遠藤商事HDにおけるSVというのは本当に名ばかりで、
ちゃんとしたSVとしての研修を受けてこなかった人達だったのだろうと想像に容易いです。
そしてここからが重要で、こんな状況下にも関わらず、
社長は100店舗達成への夢を追うため、
一旦出店した店舗の撤退をとにかく嫌ったそうです。
仮にFC店が閉店したいと言い出してきたら、
すぐにまた社員(おそらく前述の名ばかりSV)を送り、
それでも不振が続く場合は直営運営に切り替えたそうです。
さらに新規出店のアクセルも踏み続けたようで、
信用が乏しいオーナーが物件契約の審査で難航しそうという場合には、
遠藤商事が代わりに物件契約を締結するケースもあったとのこと。
ただどれだけ新規出店を積み重ねても、
前述のようにFC店へのサポート体制の構築には視点がいかず、
徐々に自転車操業状態になっていったとのこと。
遠藤商事HDは、2017年4月に倒産してしまったようですが、
2016年9月度の売上高が25億あったとのことなので、
やはり最終的には(FC店撤退店の譲渡を含め)直営店の比率が大きく、
売上はインパクトがあっても営利が赤字の積み重ねだったのではないのかなと推測します。
※正確なことは不明です。推測で書いてます
本書では以下のように纏められています。
「飲食ビジネスは食材や酒を仕入れる必要があり、
店舗拡大には家賃や保証金などの費用もかかる。
社長はその点を甘く見ていたのかもしれない。
社内にも、社長に手元資金の重要性を教え、出店に歯止めをかける財務に明るい人間は最後まで育たなかった。」
・・・これは自分の視点では違和感があります。
「飲食ビジネスは食材や酒を仕入れる必要があり、
店舗拡大には家賃や保証金などの費用もかかる。」
↑この部分はFC展開が軸であれば、
基本的に本部が負担するものではないため、違和感があるのです。
直営であれば、上記指摘は的を得ているでしょうが、
FC展開ではこれが原因で本部の倒産は考えにくいです。
では遠藤商事HDの何が問題であったか?
これは当ブログのコアな読者の方であれば御理解いただいているように、
FC展開の基本要件である「収益性・再現性・理念」
おそらくですが、FC展開開始時に3つとも存在しなかったのではないでしょうか?
収益性については、
もはや判断材料が無さ過ぎて考察が難しいですが、
Wikipediaに、看板商品が「500円ピザ」だったと書かれていたので、これをもとに考えましょうかね。
大枠コストを人件費100万、家賃30万と仮定して130万。雑費入れて150万が損益分岐だと仮定。
原価3割で考えると1枚あたり売価500円、原価150円。
つまり、150万の損益分岐を超えようと思ったら、
月に4,286枚(1ヶ月休み無で)1日143枚の500円ピザを売らなければなりません。
FC加盟オーナーさんはここからロイヤリティを支払うわけですから、
「FC展開開始時点で然るべき収益性が存在しなかった」と捉えるのが自然でしょう。
再現性については、
ここが本件の一番の問題点だったのでしょう。
アルバイトでも1枚90秒で本格ピザが焼けるという窯や生地伸ばし機セットだけでは、
FC店の売上が立たないことへの本部の認識不足。
そしてそれがゆえにFC店への研修やサポート体制構築を軽視したこと、
これにより再現性が存在しなかったわけです。
理念については、
本書の中で社長がいつだかのメディアインタビューで、
「ビザを日本の主食にしたい」と語っていたという描写がありました。
一見、理念っぽく見えますが、
「なぜビザを日本の主食にしたいのか?」
「ピザを日本の主食に昇華できた暁には何が起こる?あるいは何を起こしたいのか?」
ここまでセットでないと理念とは言えません。
自社の商品を普及させたい=理念、ではないのです。
その先に起こること、起こしたいこと、それが理念です。
結果論と言われてしまえばそれまでですが、
もしこの遠藤商事HDのような状態の社長から弊社フリグマにFC展開の相談を受けたら、
「上記の3軸全て揃っていないので、今はFC展開をするべきではないですね」と断言します。
それでもどうしてもFC展開をしたいというのであれば、
フランチャイズオーガナイズAプラン契約ではなく、
Bプラン契約にして3年100店舗を目指さず、
じっくり1店舗1店舗のFCを支援してじっくり拡大していくように諭します。
同時にSV研修サービスも受注し、
横Tさんからのゴリゴリ研修でSVを育成してもらうと思いますね。笑
閑話休題。
上記ピザのフランチャイズ事例は、
フランチャイズを正しく操縦しなければ、FC本部の倒産もあり得るという良い教材ですね。
こういう背景からも、
今後FC展開を開始される企業様、個人の皆様にはぜひ弊社フリグマを頼っていただきたいです。
お問い合わせ | flegma(フリグマ)
お気軽に御相談ください。
これは弊社の営業というよりは、
フランチャイズ業界健全化のために、
歪なFC本部を増やしたくない&そこに加盟して被害を被るオーナーを1人でも減らしたいという、ピュアな想いです。
収益性・再現性・理念が伴っていないのに、
無理に100店舗を目指したら本部倒産の末路も有り得ますからね。銘肝しましょう。
ではまた。
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株式会社フリグマ(Flegma,Inc.)代表取締役社長
佐々木翔(sho sasaki)
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【HP】
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